• 永い満足

    初めての設計住宅を引渡して30年余り。先日その建主からソファー張替えの相談が、嬉しい電話です。作例の中には小さな不具合もありますが、人間同様、建てた家には健康診断とその対処を、同じチームが続けていくことが重要。その連続こそが唯一「建主にとって長い満足」に繋がる道筋だと思います。信頼できるチーム作りには15年掛かりましたが、このネットワークでこそ永い満足が約束できます

    永い満足
  • 建主取材

    住宅専門の設計者を志し30年間変わらず取り組んでいるのが徹底した建主取材です。人は会って話すと自分の気持ちは伝わると考えがちですが、家づくりには当てはまりません。我が家建設は建主が初めて挑む出来事ゆえ「何をどう伝えるのか」は素人なのです。そこで私たちは20枚にも及ぶアンケート調書を駆使し、言葉のキャッチボールで建主の価値観と本音、欲や癖をも汲み取ろうと考えています

    建主取材
  • 敷地を解く

    地盤、河、風などの自然環境から、道、インフラ、都市化などの社会要因、そして隣の視線、日影、住民関係などなど、土地には長い経緯の結果「敷地の個性」が染み込んでいます。この目に見えない個性を読み解けるかで、暮らしの居心地は大きく変わります。文献や資料調査で浮上した長所短所だけでは把握しきれないこの解読には、30年の経験則が大いにモノを言ってきました

    敷地を解く
  • 体験する

    見るや聞くでは味わえない生身の「体験」は、深く記憶に残ります。写真は家族皆で手形瓦を作る様子。職人の手解きを受けながら、屋根瓦と同じ土の板に掌を強く押し当て、どこか懐かしいズシリとした土の重みを味わいます。乾燥+焼成を経て竣工に合わせて届く手形瓦。玄関隅の壁や床に埋め込まれた小さな手の痕跡は、子供の成長と共に家づくりを振り返る証になることでしょう

    体験する
  • 再⽣させる

    百年前、知恵を技と財産を投じた民家を、もし今実現させるなら桁違いな人手が必要です。しかしこれを現代に見合う仕様に再生させるには、100年前に負けない知識と経験と決断が要ります。何度も同じ境遇の家族の悩む顔を拝見する中で、一つの出口は「夢と愛着と勇気」でした。参加する現場側の我々にも同じ3つが欠かせません。新しいものにはない宝物が見える眼とともに...

    再⽣させる
  • 素材探訪

    計画がまとまり主体が図面から現場に移る頃、建主ご家族を是非案内したいのが「素材探訪」です。自分の家の素材がどこから来るのかを探る体験は、大人の社会科授業とも言えます。写真は建主が大黒柱を選ぶ様子。見学会や展示場では決して味わえない「物語になる家づくり」を体現してほしい。原生林、製材所、石切り場、瓦窯、一生忘れない探訪の旅、私が案内します

    素材探訪
  • 現場は⽣き物

    家づくりの現場は生き物です。毎日少しずつですが確実に進行する現場は、大勢の作り手の共同作業。一つの業種の影響は直ぐに全行程に伝播するため、順調な工事進行は現場監督の手綱捌き一つとなります。一方設計者はもう一歩引き、建主の目を加えて束ねる家づくり全体の舞台監督。壁の手触り感やスイッチの高さなど、建主確認の必要部位を判断し、次のステップを仕切っていきます

    現場は⽣き物
  • 屋根は基本

    年々凶暴化してくる気象。中でも豪雨はいつどの地域でも襲ってくる怖い自然となりました。これを相手に家を守るのが「屋根」です。特に瓦の屋根は、24時間365日、雪雨風だけではなく、熱線や紫外線からも家を家族を守ってきました。だからこそ、屋根には外壁や窓以上に強靭な耐久性を備える必要があります。その期待に応えられるのが1000度の熱で焼いた瓦だと私は考えています

    屋根は基本
  • 拙宅26年

    35歳で建てた家が26年を迎えました。建築物にとって四半世紀は通過点に過ぎませんが、人生の半分近くを自作の中で過ごした時間は、貴重な取材時間。採用した材料選定の良し悪しから始まり、工夫したつもりが失策となった不具合や仕掛けは、全て実作にフィードバック出来ています。住宅設計者にとって、苦労はしても早い段階で自宅を建てる決断は、間違いなかったと考えています

    拙宅26年